車椅子とキッチン問題…バリアフリー&おしゃれなキッチンを目指した体験談

車椅子で自立生活を送るためには、まず第一にトイレ、第二に浴室。これらのバリアをクリアしないと難しいです。
そして優先順位は低いですが、我が家のように上半身が動く車椅子ユーザーにはどうしても外せないもの。
それはキッチン。
2021年3月現在、パナソニック、リクシル、アビリティーズ、EIDAIから車椅子ユーザーのためのキッチンが発売されています。
足が入れられるように下部がオープンになっていたり、シンクが浅型で足にぶつからないようになっているものです。
メーカー製で自分たちの希望が叶えばそれで良いと思います。
…我が家は叶いませんでした。間取りのせいで。
この記事では、バリアフリーとオシャレを両立したキッチンにするための苦難と、その結果どのようなキッチンにしたのかを書いています。
我が家の事情はこちらの記事をどうぞ。
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我が家がメーカー製の車椅子ユーザー用キッチンにしなかった理由
当初はリクシルのウエルライフを検討してました。(というかウエルライフ以外ダサすぎませんか…? メーカーさんもっと頑張って!)
ウエルライフは壁付けでしか設置できないのですが、ぐるぐる動ける回遊性のあるキッチンにしたい我が家は、立ち上がりの壁を作って無理矢理アイランドっぽくさせようかと。
だがしかし。
ある日とみー氏は気付いてしまったのです。

あれ? ダイニングテーブル置くと、リビングで私がゴロゴロできるスペースがないじゃん…
正確に言えば、私がゴロゴロしていると夫が車椅子で通れない。そもそもゴロゴロできるスペースが狭い。横幅2mもない。
うーん。これは非常にまずい。
ダイニングテーブルの向きを変える案もありますが、テレビが見づらくなるし、それでもやっぱりスペースが足りない。
キッチン側を通る案もありますが、どちらかの位置によってどちらかの行動範囲が制限されるのは好ましくない。
間取りは個人的にベストなので、もうこれ以上変えたくない。

いや待てよ…パナソニックのいろりダイニングにして、調理スペース兼ダイニングテーブルにしてしまえば解決するのでは?!
と閃いたので、いそいそとショールームに出かけました。
パナソニックのいろりダイニングを車椅子仕様にするまでの道のり
いろりダイニング。こんなにスタイリッシュでオシャレで、加熱機器下が空いているなんて…非常に好都合。
ぜひぜひ採用しようと思い、あとはシンクを浅型シンクに変更してシンク下を空けてもらえれば楽に車椅子仕様にできるじゃん! と思っていました。
なのですが。ここからが長かった。
キッチンの高さ問題
いろりダイニングはL-classというグレードのものです。
L-classは1cm単位で高さの調節が可能と聞いていたのですが、いろりダイニングは例外。
800mm、850mm、900mmの3種類しか選択肢がありません。
いろりダイニング下部の空きスペースはカタログに載ってます。
- 800mmは622mm
- 850mmは672mm
- 900mmは722mm
この空きスペースの高さが車椅子ユーザーにとって非常に大きな問題なのです。
800mmの方が夫にとって使いやすいのでしょうが、足が入らない。(最低でも650mmは必要)
そうすると850mmにするしかないのですが、車椅子ユーザーにとって高すぎやしないか? と不安でした。
しかし…夫は180cmを超える比較的高身長な上に…座高が高い。
なので夫でも無理なく使えるとのことで、高さ問題は割とあっさりクリアしました。
私も850mmがちょうど使いやすい高さなのでよかったです。(身長161cm)
受傷前は

私も短足だから、子どもは短足のサラブレッドが生まれちゃうね!
なんて言ってましたが、まさか胴長短足が役立つ日が来るとは。笑
(ちなみにちゃんと理学療法士さんや作業療法士さんたちに相談して、シミュレーションした上で決定してます)
健常者か車椅子ユーザーか。キッチンに立つ頻度はどちらが高いかでキッチンの高さを決めましょう! (我が家はこれからは夫がメイン)
迷ったら車椅子ユーザー側の高さに合わせておけばOK。健常者は座れますが車椅子ユーザーは立てないので。健常者はキャスター付きの椅子を使えばみんな幸せ!
浅型シンク問題
高さ問題はクリアしたところで、新たな問題が勃発しました。
いろりダイニングでは浅型シンクが設置不可とのこと!
なので通常の深さのシンクにするしかないのですが、シンク下を無理矢理オープンにしてもらった図面がこちら。
キッチンの高さ850mmにするとシンク下は高さ625mm。一番下がっているところで500mm。
奥行も330mmで車椅子ユーザーにとって実用的ではありません。つま先ぶつかっちゃうね。(下半身麻痺なので、ぶつかっても痛みが分からないから危ない)
シンク下のスペース高さは、パナソニックのカタログ内にあるどのシンクを選んでも変わりません。
アイランドキッチンを泣く泣く諦め、シンクと加熱機器がセパレートになっているⅡ型キッチンにすることに。
パナソニックのカタログはこうやって色んなパターンが載ってて、非常に参考になりました!
個人的意見ですが…I型やアイランドに比べるとⅡ型の方が車椅子ユーザーにとって使いやすい(と思われる)ので、それはそれでよかったと思います。
車椅子は平行移動できないからね…。
あとⅡ型にすることで、不要になりそうだったダイニングテーブルを置くスペースが出来たのもよかった。
いろりダイニングのお値段問題
こうしてⅡ型キッチンで加熱器側はいろりダイニングにしようと話を進めていたのですが…出てきた見積を見て言葉を失いました。
パネルを一番下のグレードにしたにも関わらず、お値段は設置費用込みで約250万円。

はい無理ー!
まぁね、Ⅱ型だからね。面積広い分、普通より高いのは分かります。
だがしかしキッチンにそこまで出せません…。無念。
凄い親身になって話を聞いてくれて、あれこれ調べてくださったショールームのお姉さん。ごめんなさい。
造作キッチンにしたことで値段も抑えられ、ほぼ理想通りの車椅子キッチンに!

もう下部が空いてれば何でもいいです…
車椅子キッチン問題に相当時間を費やし、疲れ果てた私。
そう一言つぶやいて、造作キッチンを作ってもらうことにしました。
しかしまた問題にぶち当たります。
グリルレスの加熱機器のラインナップが少ない!
グリルあったら足が入らないでしょうがー!
というわけで国内メーカーではほぼ一択。三菱のユーロスタイルIHにしました。
本当はパナソニックのトリプルワイドIHがよかったのですが、パナソニックのキッチンでないと設置できないのが残念。
天板とIHの段差がほぼなく(1.9mm)、フラットで掃除しやすいのが羨ましい。(ユーロスタイルIHは7.6mm)
紆余曲折の末に出来た造作キッチンは、Ⅱ型でいろりダイニング風。
お値段170万円、設置費27万円に落ち着きました。
それでも高いけど仕方ない。ほぼ理想通りです。
車椅子用キッチンを検討している方に伝えたいこと
車椅子ユーザーにも使いやすいキッチンにするために、私がぶち当たった問題点や仕様は以下の通り。
- リクシルのウエルライフは壁付けでないと設置不可
- パナソニックのエイジフリープランも壁付けでないと設置不可
- パナソニック いろりダイニング関連
- パナソニックのいろりダイニングの高さは800mm、850mm、900mmの3パターンのみ
- シンク下を空けることは出来るけど、どのシンクを選んでも高さMAX625mm・MIN500mm(850mmの場合)・奥行330mmなので実用的でない
- アイランドキッチンでは浅型シンクは取り付け不可
- グリルレスのビルドインIHは国産メーカーでは選択肢がほぼない
積極的に料理をしない私が、住設の中で何でこんなにキッチンにこだわったのかというと、リビングから丸見えのものだし、1日3回以上使うものだから。
反対に浴室は1日1回しか使わないのでめちゃくちゃ削りました。(そもそもシャワー派だったので大して重視してない)
どの家づくりにも言えることですが、こだわりポイントにはお金をかけて、それ以外は削ることで満足度の高い家になりますよ。
自分たちの願いを叶えた造作キッチン。これで2人で仲良くご飯作ろうと思います。
実際使ってみた感想は別記事にて。
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