車椅子ユーザーのためのバリアフリー住宅設計ポイント【WEB内覧会まとめページ】
バリアフリー住宅は、段差を無くしたり、手すりを付けたりするではありません。
- 段差や手すり以外ではどんなことに気を付けたらいいのか…
- ハウスメーカーや工務店、病院スタッフが相談に乗ってはくれるものの、本当にそれで問題ないのか…
- 失敗したら生活そのものが出来ないかもしれない…やり直すには金額が大きすぎる…
不安だらけですよね。
健常者の家づくりとは勝手が違います。十人十色な障害の程度。間取りや設備に気をつけないといけないことがいっぱい。
実例を見ようにもバリアフリー住宅の事例が少なすぎる…!(仕方ないのですが)
こんにちは、とみーです。
夫が脊髄を損傷して車椅子ユーザーになったため、バリアフリー住宅を建てました。
情報収集にとってもとっても苦労したので、私にできるせめてものことで後発の方の参考になるよう残しておきます。
このページではバリアフリー注文住宅を建築するにあたり、全体的に気を付けたことを書いています。
部屋ごとの設備や気を付けたこと・後悔ポイント等々の詳細は各ページにて。
- 脊髄損傷者(L1)
- 下肢麻痺・自立歩行不可
- 上肢は問題なし
- 日常生活はおおむね自立(細かい介助は必要)
車椅子ユーザーでも使いやすくするため、建具(ドア)は引き戸にした
我が家では車椅子ユーザーにとって使いやすい引き戸を基本的に採用しました。(1ヵ所だけ開き戸)
ソフトクローズ機能付きです。閉める時、一定の箇所まで来たら扉の勢いが落ち、ゆっくり優しく閉まってくれます。勢いが足りないときは逆に引き寄せてくれます。
隙間空いてるじゃん! ちゃんと閉めてよ!
という無駄な喧嘩が無くなるので、引き戸を採用するならバリアフリー関係なくソフトクローズは必要だと思います。お値段アップしますが。
ユーザーフレンドリーな引き戸ですが、デメリットもあります。
- 開き戸と比較して高い
- 引き込みの壁にスイッチが付けられない
- 音が漏れやすい
- トイレだと臭いも漏れやすい
特に2番目のスイッチについては間取り作成時の難関ポイント。
対策としては、どちら側からでも押せば開く建具があります。
これなら引き込みの壁が必要ありませんし、押せば開くので車椅子ユーザーにも使いやすいです。
通路幅と有効開口幅
一般的な自走式車椅子の幅が630mm以下。
有効開口幅(ドアを全開した際の幅)は850mm欲しいと言われており、我が家も850mmにしてあります。
一番狭い通路が玄関前の通路で約1000mm(1m)なのですが、有効開口幅850mmなら問題なく曲がれます。
そして我が家で唯一850mmないのが玄関の引き戸。有効開口幅766mmです。
ただ土間の部分は約1100mm(1.1m)あるので、こちらも問題なく曲がれます。ちょっと慎重に動く必要はありますが。
というわけで全てを広く取らないといけないわけではなく、狭い通路×広い開口 か 広い通路×狭い開口 ならOKです。
心配なら床にテープ貼ってシミュレーションしてみるのが一番かと。
車椅子に強いフローリングにした
フローリングはトイレも脱衣所も含めて全部、車椅子対応のフローリングにしました。パナソニックのベリティスです。
汚れが付きにくいらしいですが、付くことは付きます。車椅子のタイヤ汚れが。
でもウェットティッシュで擦れば落ちるので、お掃除が比較的簡単なのは本当だと思います。
傷のつきやすさは不明…。
ただ、私がスリッパなしで生活していた頃、立って家事をしていたら足の裏が痛くなったので、普通よりは硬いんだと思います。
床材全て同じ&上吊り引き戸なので、インスタあるあるの見切り材どーのこーの(細いのがオシャレ、床の色と合ってない、等)は知らず知らずのうちに回避できました。笑
入居してそれほど年月が経ってないので当然ですが、今のところ水まわりでもシミはついてません。(キッチンだけマット敷いてます)
ちなみに硬いので傷はつかないのかと聞かれるとそうではなく、普通に硬いものを落としたらえぐれます。
間取りに回遊性を持たせ、行き止まりの箇所には必ず転回スペースを作った
脊椎を固定したボルトを抜釘していないせいかもしれませんが、夫は体を捻って後方確認ができません。首を回せる範囲しか見ることができないんです。
なので後方確認がしづらく、長距離バックが難しいです。狭い場所ならなおさら。
行き止まりを極力作らないように回遊性を持たせた我が家の間取り。
そのおかげで夫がはまって身動き取れなくなっていません。笑
車椅子が転回するのに必要なスペースは150×150cmと言われてます。参考までに。
横に広い収納スペース
ファミリークローゼットを作りたかったのですが、間取りの都合で諦めた我が家。
代わりに、要所要所に横幅広めの収納スペースを作りました。
健常者障害者関係なく、一ヵ所にまとまっているよりも使うところに使うものがあった方が便利ですよね。
まぁ1点失敗したのが「横に広く」と考えすぎたあまり、奥行のある収納物のことを忘れていました。我が家の収納の奥行は最長でも約75cmです。
今のところ困ってませんが…家族増えたら将来困ることが出てくるんだろうなぁ…。
一応屋外に物置を置けるスペースはあるので、設置を検討しています。
踏板四角形で折り返し2回の安全な階段にした
我が家の階段は折り返しが2回あります。そして踏板は全て四角形です。
この形状は折り返し部分で足を踏み外す危険性が減り、万が一踏み外したとしても一番下まで落ちない(絶対に途中で止まる)、超安全な階段です。
車椅子ユーザーは階段を使わないのに、そこまでする必要あるのか…と思われた方もいるでしょう。
階段に関してはズバリ健常者である私のためのものです。
私が動けなくなったり怪我して入院したりすると、夫の生活にダイレクトに支障が出ます。すなわち私は出来る限り健康でいないといけません。
また、脊髄損傷は治すことができる可能性を秘めています。
将来、再び歩けるようになったとき。
受傷前のようにスタスタ歩けるようになれば嬉しいですが、そう上手くいかないと思うんですよね。(でも待ってます、希望者全員が受けられる再生医療!)
三角板があると踏み外す危険性が高いです。我が家の手すりは内側についているのでなおさら。
なので、家の中での怪我のリスクを減らすべくこのような階段になりました。
デメリットは坪数が増えること…階段のせいで我が家は真四角の家になりませんでした。耐震性高くしたかったのに。
バリアフリー住宅でやった方がいいと知っていたけどあえてやらなかったこと
腰壁で壁の耐久性をアップさせなかった
車椅子が壁にぶつかった場合、勢いが強いと傷ができることも。
それを防ぐために腰壁を設けるのがよいとされています。
…が! 老人ホーム感が強すぎるので我が家はやめました。
衝撃緩和手摺というものがあり、そちらならよいかも。(でも付ける場所はよく考えないと、家全体に付けるとお高そう…)
コンセントの高さを上げなかった
脊髄損傷者は体幹がないため、前傾姿勢になると元に戻れなくなります。
なのでコンセントに手を伸ばすのが難しいのですが、我が家はほとんどのコンセントを標準の高さで付けてもらいました。
コンセントって、頻繁に抜き差しする場面はどんなときでしょう。
- 掃除機
- ドライヤー
- スマホの充電
ぱっと思いつくのはこんなところ。
掃除機以外は延長コードでどうにかなりますし、掃除機についてはロボット掃除機を導入してしまえばOK。
なので無理して全てのコンセントの高さを上げなくても大丈夫だと私は思います。
我が家もドライヤーを使う洗面所と、スマホを充電するベッド脇のコンセントだけ高さを上げてもらいました。
なのですが、スマホ充電に至っては結局延長コードを使ってます…。
バリアフリー住宅の補助金・助成金
バリアフリー住宅に改修する場合は、自治体で補助金が出ることもあります。一度お住まいの市区町村に問い合わせてみてください。自治体のホームページにも載ってるはず。
だがしかし。新築の場合は自治体の補助がないことが多く…。
何故でしょうね。新築建てられるお金があるなら補助金いらないよね、ってことなんでしょうか。
ないよ! 我が家はローン借りられる金額MAXで借りたよ! 私の年収の10倍だよ!
もちろん返せる試算はありますが…でもさ、バリアフリー住宅建てるのって、徐々に年老いて今までの家だと暮らしにくいから…っていう時間的余裕があるパターンだけじゃありませんよね。
事故や病気で突然身体が不自由になって、早急にどうにかしないパターンも沢山あります。
コツコツお金貯めてる時間なんてなかったんです。
特に田舎だとバリアフリーのアパートは皆無で、公営住宅も空きがないことがほとんど。建てるしかないんです。
そんな時に、少しでも補助金が下りたらどんなに助かることか。
でも新築では下りない。そもそも制度がない。モヤモヤ。
まぁ新築には新築の助成がありますが…プラスアルファでさぁ…なんかこう…欲しいよね…。
そんな悩みを抱えてる方に朗報です。
公益財団法人ノーマライゼーション住宅財団にて、助成金による福祉住宅建築支援を行っています。
財団発行の福祉住宅助成実例集に掲載が条件ですが、ご興味ある方は下記のリンクよりどうぞ。
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